諦めていた恋の続きを始めます


「悠真さんに、こんな素敵なお兄様がいらっしゃったなんて知りませんでしたわ」

会話の中心に沙織がいて、両親は見たこともないくらい上機嫌だ。

にこやかに微笑む沙織を見て、悠真は背筋に嫌な汗が流れた。
少し前に悠真と結婚してもいいと話していたのに、すでになかったことにしている。

(沙織はいったい何を考えているんだ)

悠真は沙織には裏の顔があるとしか思えなかった。
真大に好感を抱いているというより、周防総合病院の次期院長の妻の座を目の前にチラつかされて、その気になっただけだろう。

だが真大もこの縁談に納得しているのか、いつもどおりの穏やかな表情で沙織の話に耳を傾けている。
弟とはいえ兄の好みなど聞いたことはないし、まったく見当もつかない。
真大は有能な医師だが、仕事第一主義だ。華やかな生活をしている沙織との相性は未知数のはずだ。

「やっと孫が抱けるのね」と気の早い話までしているのを、悠真は冷めた目で見ていた。


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