ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「お疲れ」
「ぎゃ……っ!」
首元にピトリと当たるひんやりとした何かに驚いて素っ頓狂な声を上げて振り返る。
そこには、缶コーヒーを片手に屈託のない笑みを浮かべる小出くんの姿があった。
彼はケラケラと声を上げて笑うと、王子様と呼ばれるに相応しい立ち振舞いをしながら、声を発する。
「ほんと、色気のない声してんなー」
「小出くんが、私を驚かせるのがいけないんでしょ!?」
「おー。悪い、悪い」
「ほんとに謝罪する気、ある?」
「さぁ? どうだろうな?」
こちらを挑発するような発言には、カチンと来た。
相手が有名人でなければ、今頃「ふざけるな」と怒鳴りつけているところだ。
ピクピクと青筋を浮かべて口元を引き攣らせていれば、そんなこちらの表情から考えていることを悟った彼の呆れたような声が聞こえてきた。
「あ。今、ムカつく奴だって思ったろ」
「だったら、何」
「俺さー。ずっと、高藤と仲良くなりたかったんだよなー」
こちらが警戒心を剥き出しにしながら問いかけると、想像もしなかった言葉が返ってきた。