ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「高藤じゃなきゃいけない理由は、土曜日までのお楽しみ」

 そういうところが魅力的に感じる人が多いんだろうけど、残念ながら今の自分からしてみれば苛立ちが募るだけだった。

 ――こいつ……。

 言いようのない怒りをどうにかするべく、私は彼から差し出された缶コーヒーを乱暴に奪い取る。
 その後、プシュッと勢いよく音を響かせてプルタブを開封し、一気飲みした。

「なぁ。吹部に所属していた時に吹いてたトランペットって、自前?」

 その様子を物珍しそうに観察していた彼に問いかけられた私は、缶の飲み口から唇を離す。

 ――なんで今さら、そんなことを聞いてくるんだろう?

 そう不思議に思いながらも、渋々同意を示す。

「そうだけど……?」
「じゃあ、それ持ってバッティングセンターに集合な。時間は、16時頃とかでどうだ?」
「なんで、楽器持参? 急に言われても、困るんだけど……」
「来ればわかる!」
「はぁ……」

 満面の笑みを浮かべて力説されてしまえば、拒否する気にもならない。
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