ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「今日から中途入社することになりました! 小出清貴です! よろしくお願いします!」
いかにも体育会系出身ですと言わんばかりの大声を張り上げ、優しい笑みを浮かべた新入社員の男性が朝の朝礼で元気よく挨拶をする。
その名を聞いた同僚たちは、ざわついた。
なぜならば――。
「え!? ホームラン王子!?」
「なんでここに!?」
彼は朝のニュースに取り上げられて世間を騒がせた、元プロ野球選手だったからだ。
「坊主じゃなくなってる……」
学生時代の容姿を見慣れすぎていて、どうにも違和感が拭えない。
大騒ぎしている同僚たちの喧騒に紛れてぽつりと呟いたはずだったのに、なぜか室内が静まり返る。
そして、全員の視線がこちらに注目しているのに気づいてぎょっとした。
「あの、何か……?」
「いや。そうやって問いかけたいのは、こっちの方だし……」
「高藤さんって、ホームラン王子と知り合いなの?」
「いや、顔見知りというか……」
本人を前にして答えづらい質問をして来ないでほしい。
こちらが一方的に知っているだけだと大っぴらにすると、ストーカー呼ばわりされてしまいそうで怖かった。
そんな私が言葉を濁せば、彼はこちらの想像もしない反応を見せた。