ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 小出くんは一体、いつの時代の話をしているのだろうか?
 高校時代は確かに、同性の友人からは下の名前で呼ばれていたが……。
 異性は全員、名字呼びだったはずだ。
 社内でも、私をちゃんづけで呼ぶ人はいないはずなのに――。
 まさか、私の知らないところでそう呼んでいる人がいるとか?
 情報の出どころはぜひとも引き出しておきたいところだが、そうも言ってはいられなかった。
 なぜならば、普段の明るく快活な様子をどこかに置いてきた小出くんが、唇を噛み締めて不機嫌そうな声を発したからだ。

「俺だけ仲間外れとか、ムカつく」
「何それ。嫉妬……?」
「そうだよ」

 苛立たしげに吐き捨てられた声を聞いて、思わず彼を凝視してしまう。
 ――だって小出くんって、そういうキャラじゃないでしょ?
 いつもキラキラ光り輝いていて、嫌なことがあっても二つ返事で了承する。
 学生時代は、聖人扱いされていたのに――。
 これじゃまるで、普通の男の子みたいじゃない……。
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