ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 一体、何事?

 そんなふうに考えながら立ち止まったのを酷く後悔したところで、私に逃げ場など存在しない。

「ホームラン王子と、交際されていらっしゃいますよね?」

 彼らの言い分を聞く前に、車に戻って籠城作戦を決行するべきだったのだ。
 一瞬の判断を誤ったせいで、報道関係者らしき人物に質問の機会を与えてしまった。
 これはどう考えても、こちらのミスとしか思えない。

「いいえ? そんな事実は、ありません」

 ――負けて溜まるか。

 たとえ何を言ったところで、事実を歪曲して報じられるとしても――私は絶対に、事実を認めるわけにはいかなかった。

「とぼけないでください。小出清貴選手と抱き合っていたところは、すでに抑えているんですよ」

 レポーターの人はバッティングセンターで抱き合う私たちの姿を盗撮したと思われる写真を、こちらに向かって差し出してきた。
 彼らは一般人の私に事実を認めさせ、一大スクープとして報道したいのだろう。
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