ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「いつから交際されているんですか?」
「そんな事実はありません」
「結婚のご予定は?」
「付き合っていないので……」
「ホームラン王子が引退したのは、あなたのせいだって本当ですか?」

 そんなの、私に聞かないでほしい。
 本人に突撃取材をしてください。
 そう言って追い返したいのは山々だが、彼だってすでに一般人なのだ。
 私が油断をしたせいで質問攻めにあっているのに、彼を巻き込むわけにはいかなかった。

「知りません」
「なら、どうして抱き合っていたんですか?」
「いい加減に――!」
「俺の大事な人に、迷惑をかけないでもらえますか」

 このままでは、社内までついてきそうな勢いだ。
 勘弁してほしいと声を荒らげれば、私とリポーターの間に逞しい背中を持つ男性が割り込む。
 彼を目にした瞬間、報道関係者たちは歓喜の声を上げた。

「ホームラン王子! その女性と交際しているんですよね!?」
「俺はただの一般人です。選手として復帰するつもりはありません」
「でも、芸能界には進出する気があるんですよね!? マイスイングハウスに就職したのだって、広告塔として起用されたからでは!?」
「行こう」

 小出くんはこれ以上彼らと会話する意味はないと悟ったようで、こちらを振り返って私の手を引く。
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