ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 嫌悪感をお首にも出さないのは、バッティングセンターデートの時に話していた、外面モードが発動中だからなのかもしれない。

 小出くんのほうが、よほど守るべき存在のように見えるけど……。

 私が彼の去りゆく姿をじっと見つめていれば、その視線が気がかりだったのかもしれない。
 彼女たちから、声をかけられた。

「高藤さん、相変わらず愛されてるわねー」
「ホームラン王子から一途な愛を向けられるなんて、羨ましいわ!」
「いえ、そんな……」

 私の反応を謙遜と受け取った事務員たちは、ニヤニヤと含みのある笑顔を浮かべながらこちらに問いかけた。

「で? どうなの? 高藤さんの気持ちは」
「社内でも浮ついた話を聞いたことがないけれど、実はすでに誰かと交際しているとか……?」
「い、いませんよ! いい人なんて!」

 突如始まった恋バナに辟易としながらも、慌てて否定をする。
 こんなところで嘘をつこうものなら、この話を聞いた小出くんの反応が怖いと思ったからだ。
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