ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「坊主って、いつの時代だよ。甲子園終わってからはずっと、丸刈りにはしてねぇんだけど?」

 小出くんは再会直後の私が口走った言葉を覚えていたらしく、くすくすと声を上げて笑いながら問いかけてきた。
 それが、恥ずかしくて堪らない。

「ごめん。忘れて……」
「おー。まぁ、そういう時もあるよな!」

 学生時代、彼と会話をした記憶は一切ないのに……。
 どうして、こんなにフレンドリーな態度で接してくるのだろう?

 ――イケメンって、怖いな……。

 こういうところが近寄りがたくて、自分と住む世界が違うと思った要因である。
 そう思い出した私は、小出くんから満面の笑みを浮かべて差し出された手を困ったように見つめた。

「これからよろしく!」
「は、はぁ……」

 無邪気に挨拶をされてしまったら、断る気にもならない。
 私は唇を引き攣らせながら渋々彼と握手し、小出くんが1人前になるまで二人三脚を行うことになった。

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