ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「うわぁ……。大変なことになってる……」
オフィスにいると、隣の席に座って捨てられた子犬のようにこちらを何か言いたげに見つめてくる小出くんの視線が痛くて仕事に集中できない。
パウダールームに避難してきた私は、スマートフォンを片手にSNSで自分の名前を検索する。
すると、ホームラン王子のファンから己に向け、心ない言葉の洪水が山ほどぶつけられていることに気づいて戦慄した。
容姿にまつわる投稿から、吹奏楽部でトランペットを吹いていた時の写真を転載して面白おかしく騒ぎ立てる人間たちの醜い姿を目の当たりにしたら、気分が悪くなってしまった。
「小出くんと一緒にいたら、私は一生……みんなの笑いものとして生きることになるんだ……」
学校という名の狭い箱の中でいじめのターゲットとして選ばれ、四方八方から心ない言葉を投げかけられるのだって、耐えられない人がいるのに――。
なんの準備もできていない普通の人間が全国各地から騒ぎを聞きつけた人々から敵視され、攻撃される。
そんなの、黙ってじっと嵐が過ぎ去っていくのを待ち続けられる人間のほうが珍しいだろう。