ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
 小出くんがホームラン王子と呼ばれて有名だったことは変えられない。
 彼を好きになって付き合い、結婚したとしても――スクープを求める報道関係に追いかけ回され、プライバシーを侵害され続ける。

 私には、やっぱり無理だ。

 そんな妨害すらも気にならないほど彼を深く愛せたのなら、こんな悲しい選択をする必要などなかっただろう。
 でも、今はまだ――私は小出くんのことを、ただの同級生としか思えない。

 ――時間をかけてゆっくりと彼の人となりを好きになりたかった。
 そんなささやかな願いすらも叶えられぬ状況で、彼を愛するなんてできるはずがない。

「よし……」

 黙って見ず知らずの人々からサウンドバックになり続けるなんて、絶対に嫌だ。

 ――自身の安全か、小出くんの気持ちを優先するか。

 二択を迫られた私は、この状況を打破するために1人で社長室へ向かった。

「小出くんの教育係を、辞退します」

 そして、顔を合わせてすぐにそう宣言した。

 誹謗中傷を受けながら小出くんと幸せになる未来よりも、自分の安全を第一に考えての決断だった。
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