ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
「あれ? 言ってなかったっけ? 高藤が甲子園で、めちゃくちゃやる気なさそうにトランペットを吹いてたから」
「それのどこに、惚れる要素が……?」
「演奏する本人は死んだ目をしてんのに、奏でられるトランペットの音だけは生きていた。そのギャップに、心臓を射抜かれちまったんだ」

 小出くんは屈託のない笑みを浮かべると、私の頭の上においていた手を左右に揺すって乱雑に撫でつけた。

「そっか。小出くんの気持ちは、よくわかった」
「おう」

 せっかく綺麗にセットした髪の毛が、ぐちゃぐちゃになってしまう。
 そんな抗議の視線を投げかけると、小出くんの目元が優しく和らぐ。

「あのさ。また、聞かせてくれよ」

 そんな表情で懇願されてしまったら、断れるはずがない。

「うん」

 私は小さく頷き、気が向いたら休日を一緒に過ごす約束をしたのだった。

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