ホームラン王子と過ぎ去った青春をもう一度
8/私たちのペースで
同級生から教育係、ただの同僚から友達になった私たちは、それから誰にも邪魔をされることなくたくさんの時間をともに過ごした。
昼休憩は予定さえ合えば連れ立って食べに行き、残業した日は「危ないから」と彼に送ってもらい、雑談を繰り広げる。
トランペットは月に一度、なぜか防音室が完備されている小出くんの自宅にお邪魔し、披露するようになっていた。
――心の距離は、着実に近づいている。
このまま行けば、そう遠くない未来に私は彼のことを意識するだろう。
「高藤といると、自信なくすわ……」
風呂上がりに上半身裸で室内をうろつく癖があることは、彼の自宅で寝泊まりするようになってから始めて知った。
小出くんと一緒に過ごすのが楽しくなってきた頃、同級生はソファに座ったあと項垂れる。
「俺ってそんなに、男としての魅力がねぇの……?」
どうやら彼は、いつまで経っても私が好意的な姿を見せないことに不満なようだ。
「あのさ。なんとも思っていない異性の自宅にノコノコやってきて、寝泊まりするほど非常識なつもりはないけど……?」
「まじで?」