この恋は報われないはずだった
「本当に……?」

 信じられなさすぎて、思わず口から疑問がこぼれ落ちた。それじゃ、今まで私はずっと勘違いしていたってこと?お兄ちゃんも、私のことを好きでいてくれたってこと?

「本当。俺が嘘つくような男だと思うか?」

 フッとお兄ちゃんが眉を下げて優しく微笑む。その微笑みを見た瞬間、また私の両目からポロポロと涙がこぼれ落ちてきた。

「楓は泣き虫だな」

 お兄ちゃんの言葉が聞こえて、いつの間にか私はお兄ちゃんに抱きしめられていた。優しく、まるでこの世の中で一番大切なものを抱きしめるように私を包み込んでいる。

「うっ、ううっ、わ、私も、好き……お兄ちゃんのことが、一人の男性として、ずっと好き……!」
「ふはっ、最高の告白だな」

 泣きじゃくる私の背中を、お兄ちゃんは優しく撫でてあやしてくれた。

 




「それじゃ、行ってきます」
「うん、気をつけてね」

 あれから、私たちは晴れてお付き合いすることになった。今日も、いつものように会社へ出勤するお兄ちゃんを玄関先で見送る。

「あ、楓」
「何?お兄ちゃん」

 私がそう言うと、お兄ちゃんは目を細めて口角を上げ、私をじっと見つめ顔を近づけた。え、何?急すぎてドキドキする!

「いつまでお兄ちゃん呼びするの?いつになったら俺の名前を呼んでくれるのかな?」
「……!そ、それは……!」

 実はまだ、お兄ちゃん呼びをしてしまっている。そのことに、お兄ちゃんはとても不服らしい。ごめんね、私だって本当は名前で呼びたいんだよ。でも、なんだか恥ずかしくて、つい今までのように呼んでしまうのだ。

「すぐに変えるのは無理かもしれないけど、俺たちはもう兄妹じゃなくて、恋人なんだから。なるべく早く名前で呼んでくれるの期待してる」
「うっ、善処します……!」

 私たちの恋人としてのこれからは、まだ始まったばかりだ。

 

〜END〜

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