残業以上恋未満

 そんな日が、何日か続いた。

「高松部長って、いっつもこの時間まで残業してますけど、趣味とかあります?」

 ふと疑問に思って、私はなんとなく聞いてみた。

「随分急だな……」
「高松部長って、なんか仕事人間っぽいから、趣味とかあるのかなぁ、って思ったんです」
「早河にそれを言われるとは思わなかったが、まぁ、そうだな……。植物の世話をするのが好きで、いくつか育てていたな」
「へぇ!サボテンとか?」
「サボテンも育てていたし、観葉植物とかな」

 部屋でひとり、植物に話しかける部長を想像して、ふっと笑みが零れた。
 ちょっとおじいちゃんみたいで可愛いな。

「あとは本を読んだり、動画を少し見たり……」
「動画!?高松部長、動画見るんですか?」

 真面目で堅物そうな高松部長が、お笑い芸人の動画を見たり、ゲーム実況の動画を見たりしているのはまったく想像できない。

「動画くらい誰だって見るだろう?特に動物の動画を見ていて、仕事が落ち着いたら、猫を飼おうかとも思っていた」
「あ、動物の動画……」
「見始めると、時が溶けていくんだよな……」

 心底不思議そうにしみじみと部長がつぶやくので、私は思わず吹き出してしまった。



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