Devil's Night
「そ。私の親友です」
香織の立場を考えると、彼女の腕を振りほどいて逃げることもできず、仕方なく、一緒に院内へ入った。中は、陽人が入院している大学病院より、はるかに洗練された立派な施設。
「これ、皆さんでどうぞ」
香織はナースステーションにも、手土産らしきものを差し入れ、きちんと挨拶をした。医者の奥様ぶりがすっかり板についている。
「若先生、お待ちかねですよ」
年配の看護師に冷やかすように声をかけられ、香織はただ嬉しそうに笑っていた。ふたりでエレベーターに乗った。香織がカイにコントロールされているなんて、考えすぎかも知れない。