Devil's Night
17. ウィッチ
 
 廊下に室内の灯りがもれ、眩しい光の中にカイが現れた。悪魔のような医者が、天使のように美しい姿で立っている。


「お願い。ハルを助けて」


 私は自分の良心を切り刻むような気持ちで哀願した。他の子どもを犠牲にすることがわかっていながら、陽人の苦しみを取り除きたいと願う自分の心の醜悪さを思い知ったような気がする。それでも、
「お願い……」
と、頭を下げる自分の浅ましさに胸が苦しくなり、涙があふれた。


 カイがひどく優しく笑い、私を室内に招きいれた。いたわるように私の背中に置かれている彼の手のひらが熱い。その熱に侵蝕されそうな気がして恐ろしくなった私は、涙をぬぐい、さりげなくカイのそばを離れた。


「いくら払えばいいの?」


 距離を置き、彼をまっすぐに見て聞いた。




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