Devil's Night
 


「何もいらないから……。美月。僕にキスして……」
と、カイが囁く。


 唐突な言葉に驚いてカイを見た。


「美月が自分の意志で僕に口づけしてくれたら、その見返りにハルを助けてあげるよ」


 ゴーストアパートで奪われたファーストキスの記憶がよみがえった。思い出したくもない陵辱めいたキス。しかも、いくら動けなかったとは言え、それを受け入れた記憶……。


「必ず助ける。だってハルは僕たちの子どもだからね」


 カイが薄く笑う。


「陽人は私と省吾さんの子どもです。バカバカしいとは思ったけど、生まれたときにちゃんと調べたわ」


 こんなことを言い争うこと自体、汚らわしく腹立たしい。
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