Devil's Night
「おいしいよ」
カップを口に運んだカイが、少しだけ口許をゆるませるが、眉は僅かにゆがんでいる。手で抑えている黒っぽいスーツのポケット辺りが、生地の色よりさらに暗い色に湿っていた。私が負わせた傷が、まだ出血しているようだ。
私はカイが血を流していることには気付かないふりをして、精いっぱいの微笑を返した。
「おかわりは?」
「いや」
カップをソーサーの上に戻したカイが、ふと窓の方に目をやって、
「こっちは日没が早そうだな」
と、誰に話すともなくつぶやいた。