Devil's Night
 
 耳鳴りがして意識が遠のく。


 幼い子どもたちを残して逝かなければならないことだけが心残りで、涙があふれる。


 更にぎゅうっと喉が締めつけられる感覚があった。


――苦しい……。省吾さん、絵莉花、ハル……。


 全てをあきらめかけたとき、頬やまぶたの上に、生暖かいものが落ちてきた。それは、いくつもいくつも落ちてくる。不思議に思って目を開けた。


「カイ……」


 私の顔にポタポタと落ちてくるのはカイの涙だった。カイが泣いている。あのロシアンブルーを殺したときと同じ、どこか幼い表情をして。その泣き顔を見ていると、なぜか罪悪感で胸がつかえる。


――ごめんね、カイ。愛してあげられなくて。
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