Devil's Night
 
 鎖が首から外れた。カイが立ち上がり、黙って私から離れていく。脇腹を押さえ、ふらふらと。


 カイが玄関の扉を開けると、その向こうはもう、薄暮に包まれている。彼は玄関のドアノブに手をかけたまま、しばらくこっちを見ていたが、やがて、静かに微笑んだ。その目が潤んでいる。


「さよなら、美月」


 そのまま外へ出て、カイは消えた。薄闇の中にとけるように。
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