Devil's Night
 
 何げなく、棚に飾られているオルゴールのひとつが気になり、金属製のそれを手に取った。たくさんあるアンティークのオルゴールの中で、なぜ、それを選んで手にしたのかはわからない。フタを開けると、小さな箱からかわいい音が流れ出した。聞いたことのない曲なのに、とても懐かしい。


「この曲……」


 私がつぶやいたのを聞いて、夫が店主にこのオルゴールのことを尋ねてくれた。


「これはフランス北東部の古い子守唄だそうだよ」


「子守唄……」


 それを聞いてなぜか、ぎゅうっと胸が締めつけられるような切なさが込みあげてきた。と同時に、ひとつの情景が脳裏に浮かぶ。
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