Devil's Night
 
「美月!」


 夫の声が聞こえた。


「省吾さん……」


「なかなか戻って来ないから……」


 言いかけて、彼は表情をくもらせた。
 夫は私の顔を見て瞬時に異常を感じたように、
「何かあったのか? 絵莉花は?」
と、聞いてきた。不安そうに尋ねられた途端、私は涙が込みあげ、その場に泣き崩れてしまった。


「美月。落ち着いて。ちゃんとしゃべってくれ。頼むから」


 肩をゆすられた。


「絵莉花が……。絵莉花が……」


 何度もしゃくりあげながら、それでも必死に説明した。
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