調香師の彼と眼鏡店の私 悩める仕事と近づくあなた
「長々とお邪魔してしまって……ありがとうございました」
「いえ。また是非遊びに来てください」

 香水を受け取り、店を出ようと扉を開けると、ものすごい雨音が聞こえてきた。

「わっ! 雨……」

 さっきまでの晴れ間が嘘のように大雨が降り注いでいた。
 傘を持っていなかった紗奈は、前に踏み出すのを躊躇した。

「あの、本当に申し訳ないのですが傘をお借りしても……」

 紗奈が振り返って小笠原に頭を下げる。すると彼は外の様子を確認した後、紗奈の足をチラリと見た。

「送りますよ。足の怪我も心配ですから」

 予想外の申し出に、紗奈は手をブンブンと振った。

「たいした怪我じゃないですし、お店を空けられないでしょう?」
「ははは。ここ見てください」

 指を差された扉には定休日の札がかけられている。

「え? 休みだったんですか!?」
「はい。今日はネットでご予約いただいた方の調香をしていただけなんです。ほら、裏口に車を回しますから行きましょう」
「ちょ、ちょっとっ」

 腕を引かれた紗奈は、断り文句が思い浮かばないまま小笠原に連行されていった。

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