先生は悪いオオカミ様
先生は、とにかく口が悪かった。

「おまえら、今のうちだけだからな。こんなに勉強するのは。」

教室に笑いが起きる。

他の先生が少し距離を置くような話し方をする中、蓮先生だけは違っていた。

冗談混じりで、でもどこか本気で、生徒と同じ目線で話してくれる。

だからこそ、自然と心の距離が縮まっていく。

気づけば、私の視線はいつも先生を追っていた。

黒板に字を書く後ろ姿、クラスメイトに笑いかける横顔、ふと見せる真剣な表情。

――その時だった。

「ん?」

突然、視線がぶつかった。息が止まる。

蓮先生はほんの一瞬だけ笑みを見せ、

「気を付けて帰れよ。」

その何気ない言葉に、心臓が強く脈打った。

口は悪いのに、いつも生徒を気にかけてくれる――その優しさが、私を少しずつ惹きつけていった。
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