落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
「見習いとはいえ聖女が一人で外出など危険だ。それに君はまだ小さいのだし、護衛を付けるか、出来ないのであればやめるべきだと思うが?」

「えぇ!? それは……ちょっと……」

 ライオネル様に厳しい視線と口調で言われて、たじろいでしまう。身長が小さいのなんて関係あるのかな?

「お兄様。心配なのは分かりますが、アイリスにも事情があるのですわ」

「あ、あぁ。……そうだな。きつく言い過ぎた。すまない」

「いえ、こちらこそ、心配してくださったのにすみません」

 私は俯いてどうしたらいいのか考えていると、エリゼが気まずい空気を消すかのように、パンッと手を叩いた。

「そうですわ! お兄様がアイリスの護衛係をすればいいじゃないですか!」

「へ? いやいやいやいや、無理ですって!」

 いいアイディアだわと言わんばかりに目を輝かせたエリゼに、思わずツッコんでしまう。

「アイリスのお使いも、毎日ではないのでしょ? 外出する時にお兄様を呼べばいいのですわ」

「いや、だから、それは……」

 呼べばって、簡単に出来るわけがない。ライオネル様は副団長様でお忙しいはずだ。それに一庶民の護衛なんてとてもしていただける身分の方ではない。
 きっとライオネル様が断ってくれるだろうと思っていると、

「そうだな。俺が護衛を引き受けよう」

「えっ! そんなことしていただくわけにはっ」

「市場の警備のついでだ、気にするな。あと無理な時は代理の者を寄越す」

「え、あ、う……」

 私は驚いて口をパクパクさせるだけで、言葉にすることができない。

「これを君に渡しておく。魔伝言鳩(までんごんばと)だ」

 ライオネル様は胸ポケットから魔伝言鳩を数枚取り出し、手渡してくれた。魔伝言鳩はとても高価な魔道具だ。手のひらの半分くらいの大きさで、鳩の形をした紙のような物だが、伝言を頼むと一瞬で相手の元に飛び立っていくというものだ。

「用事のある時はこれを使え」

 わけのわからないうちに決定事項みたいになってない? どうしてそこまでしてくれるんだろう?
 ライオネル様の顔を見上げると、涼しげな顔をしていて感情を読み取ることができない。折角ここまで言ってくれているのに、好意を無下するわけにはいかないよね。

「ありがとうございます。あの……、これからよろしくお願いします……」

私はためらいながら頭を下げた。
 
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