落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 日の当たる石畳の道から、少し脇に入った林の木陰に連れていき、大きなブナの木の幹に寄りかかるように座らせる。

「今から回復魔法をかけますね。それから神殿で治療してもらいましょう」

「……す、まない……」

「いいえ、気にしないで下さい。じゃ、いきますね」

 手のひらに魔力を集中させ、ライオネル様の全身に魔法を注ぐ。部分的な怪我の治療と違って広範囲なので、かなりの魔力が必要だ。

 視界がくらくらとしてきて、魔力が上手くコントロールできなくなってきた。

 ダメ! しっかりして! 
 自分に喝を入れ、再び意識を集中させる。

 ライオネル様の具合いが良くなりますように……。

 いつもならすぐ魔力切れを起こしていたが、今日は不思議と身体の奥から魔力が湧き上がってくるような……?
 それは子供の頃に感じたような、懐かしい感覚だった。

 しばらくして、苦しげに顔を歪めていたライオネル様の表情が穏やかになってきた。
 よかった。回復魔法が効いたようね。

「ライオネル様、体調はどうですか?」

「……」

 魔法を止め、問い掛けてみたが返事がない。俯いていた彼の顔を下から覗き込んでみると、目を閉じたままだった。規則的な息づかいが聞こえる。

「え? もしかして、寝てる?」

 見る限り顔色もだいぶ良くなったし、ひとまず安心だ。端正な顔を見つめながら、ほっと息を吐いた。

「よかった……」

 私もライオネル様の横に座り、ブナの木に寄りかかった。頭上で揺れる木の葉を見上げる。
 魔法を使った後は立っているのもやっとなのに、まだ余裕がある。もしかして魔力が上がったのかも。訓練の成果が出てきたのかもしれない。

「ふふっ。やったぁ」

 喜びでニヤニヤが止まらないでいると、突然肩にずしっとした衝撃を受けて心臓が飛び上がった。

「――ひゃっ。何!?」
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