落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 寝ているライオネル様がもたれ掛かってきたのだった。頬に触れる黒い髪がくすぐったい。

 男性の身体を私の小さな肩では支えきれず、ゆっくりと膝の上に移動させることにした。自分の膝にライオネル様の重さと熱を感じて、心臓が早鐘を打つ。

 この状況、どうしたらいいの!? 起こす!? いや、でも、きっと疲れているのだろうから、少しくらい寝かせてあげたい。
 私は身体を硬直させたまま、じっと耐えることを決意した。

「それにしても、綺麗な髪だな〜」

 サラサラと風に揺れる艶のある黒髪を見つめていると、少し長い襟足の髪と襟の隙間からあるものが見え、ゾクッと鳥肌が立った。

 これって魔物の爪痕?

 かなり酷い、痛々しい傷跡が首の後ろにあり、背中の方にも続いていそうだった。
 魔物が原因の怪我は回復魔法でも完治が難しく、長い治療が必要になる。そしてその傷跡による後遺症にずっと苦しむことになるという。

 きっとこの傷跡の治療の為に神殿に通っていたのだろう。いつ頃の怪我なんだろう。こんな酷い傷じゃ、夜寝ることもままならないんじゃないか。

 私の膝の上で寝ているライオネル様が、少しの間だけでも安眠できていますように。
 
 私は目を閉じ、そう祈った。




「……おい、アイリス。そろそろ起きろ」

 肩を揺すられて、私は目を開ける。辺りはオレンジ色に染まっていた。

「へ? どこ? 朝?」

「違う。夕方だ」

 目の前にライオネル様の顔がある。
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