落ちこぼれ見習い聖女は、なぜかクールな騎士様に溺愛されています?〜これ以上、甘やかされても困ります〜
 そう言ったフェリシティ様の魔法に包まれると、身体が回復してくる。

「私も早くフェリシティ様のように魔法を使えるようになりたいです……」

「ふふ、そう? でも私、正直言うと回復魔法はあまり得意ではないのよ」

「え? そうなんですか!?」

 驚いて声を上げた。こんなに魔力が強くて、回復力抜群なのに。

「私の生家ゴードン伯爵家は代々魔術師の家系なのだけど、ここ何代かは魔力が弱くて魔術師になることも叶わなかったらしいの」

 フェリシティ様が静かに語り始めたので、私は耳を傾ける。彼女が自身のことを話してくれたのは初めてだった。

「そこに全属性で膨大な魔力を持った私が生まれたのだけど、女であるが故に父からは何も期待されなかった。父が私に望んだのは、ただ強大な魔力を持った嗣子を産むことだけ」

「そんな……」

「でもね。私はあるきっかけから聖女になりたいと思ったの」

 フェリシティ様の横顔は懐かしげに目を細められている。

「父の猛反対を押し切って神殿にやってきたのよ、聖女になる為にね。……でも、やはり、まがい物は本物には敵わないのかしら……」

「……?」

 フェリシティ様は真っ直ぐに私の目を見つめた。その表情からは何も感情が読み取ることができない。
 フェリシティ様……?

「……ねぇ、アイリス。あなたは、魔術の術式は知っているかしら?」
「術式……?」

 たしか、魔法について学んだ時に、魔術や、術式についても少し勉強した。
 魔術は私たちの使う属性による魔法とは違い、術式を使うことで無属性の特殊な魔法を出現させることができる。魔術師団に伝わるもので、魔術師しかできない高度な技だという。

「私は、その術式の緻密な構造や、配置を見るのが好きなの。……術によってその模様は様々で、とても美しいのよ……」
 フェリシティ様はうっとりとしたように、目を細める。

 なぜだろうか。背中がゾクッと冷えるような感覚がした。

「フェリシティ様……?」 

「ふふっ、ちょっと話し過ぎてしまったわ。中断してごめんなさい。訓練に戻りましょう」

 フェリシティ様はいつものように優しく微笑んだ。
「あ、はい……」

 さっきの彼女の瞳は、どこか悲しげで、でもどこかに怖さを感じた。
 この違和感はなんだろう?
 気になったけど、私はこの感情を消すように首を振り訓練に戻った。
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