憧れの専務は私の恋人⁉︎
(専務が……居酒屋!?)
お店の扉をガラガラと開くと同時に、店員さんの大きな声が聞こえてきた。居酒屋は専務のイメージとはかけ離れている。しかし、専務は慣れた足取りでまっすぐカウンターの席に向かっていく。隣に腰掛けると、お店の店主が近づいてきた。
「智也くん、わかってるのか?リーチだぞ?」
「わかってます。今日は仕事なので平気です。」
「お手並み拝見だな。」
店主は意味深な笑みを浮かべて、目の前にビールのジョッキを2つ置いた。ここは専務の行きつけのお店なのだろう。心を許してくれているような気がして、私は勝手に舞い上がった。
「乾杯しよう。」
「はい!」
展示会の準備が忙しくて、最近は飲みに行っていなかった。お酒を飲んだのは久しぶりだ。それに、隣には憧れの専務がいる。こんな贅沢はない。「あ〜美味しい〜!」と声に出したくなるのを、ぐっとこらえた。
「早川さん、今日はありがとう。」
「いえ、お礼を言うのは私の方です。専務のおかげで、試供品を全部配ることができました。」
「篠原さんが褒める理由がよくわかったよ。商品のこともよくわかってるし、相手のことをよく見て必要なことを的確に提示できていた。手伝わなくても良かったね。」
「そんなことありません!初めて会う人に話しかけるのは苦手なんです。だから、今日も同僚が先に声をかける予定でいたんです。」
「そうだったんだ。僕も最初の頃は緊張したけど、慣れれば平気だよ。誰だって最初は不安だけど、早川さんならすぐできるようになると思うよ。」
(専務にも緊張した時期があったんだ……)
その後、専務は会話の仕方や商談のコツなど色々と教えてくれた。話を聞いていると、自分でもできるような気がするけど、それは気のせいだろう。
「早川さんは、もっと自信を持っていい。自分が思っている以上にできる人だよ。」
遠くから見ているだけの専務に褒められる日が来るとは思わなかった。私はにやける顔を隠すために、ジョッキに口をつけた。
「それに、早川さんはすごく綺麗だよね。」
思わず吹き出しそうになって堪えた。
「歩き方や立ち姿、挨拶してる時とか……すごく綺麗だと思う。」
「そ、そんなこと初めて言われました……」
なんだかすごくドキドキする。
「それに、婚約者のふりがすごく上手かったよね。知り合いに会社の重役さんでもいる?」
「そんなことありません!」
「そっかぁ~でも簡単にできることじゃないと思うんだよなぁ~隣にいるとなんか安心しちゃって……」
専務の声がなんとなくよたよたしている。思えば、店員さんや店主と話しながら、何度もおかわりを頼んでいた。専務はきっと酔っている。
「専務、大丈夫ですか?」
「ん?なにが?」
頬杖をついて私をじっと見つめてくる専務は、お酒のせいで色気が爆増している。
「酔っていらっしゃると思いますよ?」
「ほんと、早川さんはよく気が利くよな……ね、これからもそばにいてくれない?」
「何を仰って……」
「俺は早川さんみたいな人がいい。仕事に一生懸命で、可愛くて一緒に楽しく食事をしてくれる人がいいんだ。」
「専務、それは……」
ガタンという音と共に専務はカウンターに突っ伏した。
「専務……?」
「……」
(もしかして、寝たの!?)
動かなくなってしまった専務を前に呆然としていると、向こうから店主が笑いながらやってきた。
「はい、アウト~!でもまぁ、今日は彼女さんがいるからセーフかな。」
そう呟くと店主は私をじっと見てこう言った。
「彼女さん?智也くん、ちゃんと連れて帰ってね。今日寝たら、出禁だよ。」
「出禁!?」
店主はニコニコしながら去って行った。そんなこと言われても、どうすればいいのだろうか。
(とりあえず、起こさなきゃだよね……)
私は残っていたビールに口をつけた。
お店の扉をガラガラと開くと同時に、店員さんの大きな声が聞こえてきた。居酒屋は専務のイメージとはかけ離れている。しかし、専務は慣れた足取りでまっすぐカウンターの席に向かっていく。隣に腰掛けると、お店の店主が近づいてきた。
「智也くん、わかってるのか?リーチだぞ?」
「わかってます。今日は仕事なので平気です。」
「お手並み拝見だな。」
店主は意味深な笑みを浮かべて、目の前にビールのジョッキを2つ置いた。ここは専務の行きつけのお店なのだろう。心を許してくれているような気がして、私は勝手に舞い上がった。
「乾杯しよう。」
「はい!」
展示会の準備が忙しくて、最近は飲みに行っていなかった。お酒を飲んだのは久しぶりだ。それに、隣には憧れの専務がいる。こんな贅沢はない。「あ〜美味しい〜!」と声に出したくなるのを、ぐっとこらえた。
「早川さん、今日はありがとう。」
「いえ、お礼を言うのは私の方です。専務のおかげで、試供品を全部配ることができました。」
「篠原さんが褒める理由がよくわかったよ。商品のこともよくわかってるし、相手のことをよく見て必要なことを的確に提示できていた。手伝わなくても良かったね。」
「そんなことありません!初めて会う人に話しかけるのは苦手なんです。だから、今日も同僚が先に声をかける予定でいたんです。」
「そうだったんだ。僕も最初の頃は緊張したけど、慣れれば平気だよ。誰だって最初は不安だけど、早川さんならすぐできるようになると思うよ。」
(専務にも緊張した時期があったんだ……)
その後、専務は会話の仕方や商談のコツなど色々と教えてくれた。話を聞いていると、自分でもできるような気がするけど、それは気のせいだろう。
「早川さんは、もっと自信を持っていい。自分が思っている以上にできる人だよ。」
遠くから見ているだけの専務に褒められる日が来るとは思わなかった。私はにやける顔を隠すために、ジョッキに口をつけた。
「それに、早川さんはすごく綺麗だよね。」
思わず吹き出しそうになって堪えた。
「歩き方や立ち姿、挨拶してる時とか……すごく綺麗だと思う。」
「そ、そんなこと初めて言われました……」
なんだかすごくドキドキする。
「それに、婚約者のふりがすごく上手かったよね。知り合いに会社の重役さんでもいる?」
「そんなことありません!」
「そっかぁ~でも簡単にできることじゃないと思うんだよなぁ~隣にいるとなんか安心しちゃって……」
専務の声がなんとなくよたよたしている。思えば、店員さんや店主と話しながら、何度もおかわりを頼んでいた。専務はきっと酔っている。
「専務、大丈夫ですか?」
「ん?なにが?」
頬杖をついて私をじっと見つめてくる専務は、お酒のせいで色気が爆増している。
「酔っていらっしゃると思いますよ?」
「ほんと、早川さんはよく気が利くよな……ね、これからもそばにいてくれない?」
「何を仰って……」
「俺は早川さんみたいな人がいい。仕事に一生懸命で、可愛くて一緒に楽しく食事をしてくれる人がいいんだ。」
「専務、それは……」
ガタンという音と共に専務はカウンターに突っ伏した。
「専務……?」
「……」
(もしかして、寝たの!?)
動かなくなってしまった専務を前に呆然としていると、向こうから店主が笑いながらやってきた。
「はい、アウト~!でもまぁ、今日は彼女さんがいるからセーフかな。」
そう呟くと店主は私をじっと見てこう言った。
「彼女さん?智也くん、ちゃんと連れて帰ってね。今日寝たら、出禁だよ。」
「出禁!?」
店主はニコニコしながら去って行った。そんなこと言われても、どうすればいいのだろうか。
(とりあえず、起こさなきゃだよね……)
私は残っていたビールに口をつけた。