美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
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「もう30分近く一人だけど?」
「もしかして、ふられたとか?!」
「香坂さんほどの美人がそんなわけないっしょ」
「さっきメール見て嬉しそうだったじゃない」
「きっと人事の口田課長待ってるのよ」
「この時期、人事って忙しいじゃない。だから待ち合わせに遅れてるのよ、きっと」
「口田課長ってさ、あの若さで人事課長ってすごいよね」
「しかも、背が高くて、顔もめっちゃかっこいいし」
「いつもそっけないのに、香坂さんにはめちゃめちゃ甘いでしょー」
「それがいいのよおー」
座敷の送別会ではこんな会話がされている。
声が大きいよ。
聞こえてる、聞こえてると思いつつ知らんぷりで焼き鳥をほおばる。
優子は基本一人だったが、さっきから何人かが声をかけてくる。
混んでいる週末。
空いている隣に座りたいようだが、亮太郎が来るのだ。譲れない。
「ごめんなさい。連れが来るので」
と謝ってもしつこく話しかけてくる。
「でも、お姉さん、結構長く一人じゃない?
お連れさんするまで一緒に飲もうよ」
この人席がないからとなりいいかって聞いてたけど?と思いつつ返事をする。
「私が長くいるって知ってるならもう座ってる席があるんじゃないですか?」
「あることはあるんだけど、お姉さんの隣で一緒に飲みたいな」
「えっと・・・え?やだ、なんで勝手に座ろうとしてるんですか?」
「あ。ばれた?」
「ばれたとかじゃなくて、お連れさんいるんじゃないです?」
「ん?大丈夫」
どうやらナンパだと気付いた時には隣に座られてしまった。
しかもしつこいし!
とそこへ、
「おまたせー」
とにこやかな声が聞こえた。
「亮太・・・!」
と振り返るとー。
そこには亮太郎ではなく、先程挨拶を交わした八木君が立っていた。