美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
私は近しい友人に「人当たりの良い人見知り」と言われている。
初対面の人を相手にもにこやかに話すけど、空気を読むどころか顔色を窺いすぎて、飲み会後の疲労感や自己反省会でへこんでしまう。面識がある人にも対しても同様だ。
相手の顔色を窺わずに話ができるようになるまでかなりの時間と体力を要する。
仕事ならまだいいが、プライベートでまで他人と関わりたくないというのが正直なところだ。

座敷に目をやると、彼らの同部署らしき人達が待っているようだった。

「急がないと、上司待たせちゃってるんじゃない?」
「あ!やべっ!じゃ、今度飲もうねー」

フレンドリーに手を振る同期君と、会釈する八木君たちはお座敷に行った。



「うーん」

静かになったカウンターで、出てきた焼き鳥とお酒を飲みながらうなる。

せっかくおいしいお酒と焼き鳥食べてるのに、これ食べたら帰んなきゃだめかなあ。
おひとり様で飲んでることは別に気にしないが、待ち合わせっていう嘘がばれるのはよろしくない。
ここでも無意味に同僚たちの気持ちを想像してしまうのだ。
やはり相手が来れなくなったようなそぶりでもして「嘘をつかれた」と思われる前に帰ろう。

その時、ブーーーーンとスマホが震えた。

見ると、「口田亮太郎」からのメッセージだった。

 

 『もしかして、今、どっかで飲んでる?』

 『YOSAKUで飲んでる くる?』
 
 『行く これから会社出るから10分くらいでつくよ』



よしゃ、亮太郎が来るならさっきの「待ち合わせ」発言が嘘じゃなくなる。

「すいません、ぬる燗お代わりくださいー」

ほくほく顔でさめてしまったぬる燗をぐびぐびっと飲んで、お代わりを注文するのだった。


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