美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
「はーーーー」
と深呼吸をして空を見上げる。
やはり都会の夜空は星が見えない。

「香坂さん」

急に声をかけられてびくっとする。

「八木君!どしたー?」

「香坂さんと話してみたいなって」
人たらしな笑顔を振りまきながら、甘っちょろいセリフを吐いてくる。

うーん・・・・こんなに子犬君にからまれたら、会社の女性陣に何を言われるか分かったもんじゃない。
ただでさえ、私は人に嫌われるタイプなんだ。
空気読めないし、八方美人とか言われるし・・・。
ああーーー。どうしよう。
仕事し辛くなるなあ・・・。


「香坂さん、何見てたんですか?」
「ああ、星。星見えないかなーって」
「見えますか?」
八木君が隣に立って一緒に空を見上げた。

「全然」
隣の八木君を見ると、顔の位置が随分と高いことに気が付く。
今日の私は飲み会があるので低めのヒールを履いているにしても、」八木君の慎重派180近くあるのだろうか?

「八木君って背、高いんだね」
「惜しいんですよ」
「?」
「179㎝。180まであとちょっとなんですよね」
「十分高いです。 顔もかっこいいし。 優しいし。 仕事できるし。 モテ要素満載」

「ありがとうございます。
香坂さんも美人です。きれいで、かわいい。 仕事も丁寧でおもしろい。
そんな人にほめられてうれしいです」

「ええっ!!!」
ドキッとして、一歩下がってしまった。

「えっ?褒めてるんですけど。 
そこ、ひくとこですか?」
「だって。
八木君、自分がイケメンだってことわかってる?」
「えっと・・・まあ、それなりに・・・って何言わせるんですか」
お酒のせいか少し赤い顔で笑っている。

「イケメン八木君がそんなこと言っちゃうと、社交辞令なのに、みんな本気にしちゃって『じゃあ、付き合ってー』とか言われちゃいそうじゃない?」
「そりゃ、誰にでもそんなこと言ったりなんてしませんよ」

まーた、こんな甘い言葉を平気な顔して言うんだから。
私だってドキドキするし、緊張もしちゃうんだ。
そんなんことを考えていると、八木君がいたずらっ子っぽく目をきらめかせた。

「香坂さん、『じゃあ、付き合っちゃうー』って言ってみてくださいよ」
「え? やだよ」
「まあまあ。ちょっとだけ、ね?お願いっ」
八木君の合掌お願いポーズをついかわいいと思ってしまった。

「しょうがないなあ」
と言いつつ、言った後の八木君の返事にも興味がある。
ドキドキしながら「コホン」と咳ばらいを一つする。

「ね、それなら、付き合っちゃう?」
“あざと女子”がやりそうな上目使いで甘えた声を出してみた。
八木君は、それはそれは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
そして、


「いいですよ」


と甘く微笑んだ。

いい  です よ   ?

「!!!???ええええええええええええええええええええええ!!!!!」

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