美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱

これがマウント？

翌日。
ミーティングルームに現れたのは、八木君も前にいた部署の先輩で、「岩瀬」と名乗った。
八木君の一つ上、つまり私の一つ下という岩瀬さんは明るくてかわいい女性だった。
私達は円卓のデスクに座って資料を広げながら情報交換をした。

「そもそも、どうしてこんなにAIに依存する人が増えたんだろう？」
私はふと浮かんだ疑問を口にした。
岩瀬さんは、
「え？そんなの便利だからに決まってるじゃないですか」
と冷たい目を向けた。
あれ？
なんだか視線が･･･鋭い？
「確かに…」
八木君の同意する言葉に、自分一人がこの場にいて勉強不足だったことに恥ずかしくなった。

八木君は視線を上に向けて視線を動かした。彼が考える時の癖だった。
「便利だからつい使ってしまってますけど、AIの友達とか彼氏っていうのは便利とは違う気がしますね」
と八木君が言うと、すかさず岩瀬さんが、
「そうだよね。違うかも」
と言った。

んんん？
岩瀬さんがいきなり同意して、違和感を覚える。

「ねえ、ここ見て」
岩瀬さんは八木君の腕を突いて視線を差し出したタブレットに向けさせた。
タブレットは二人の間にあるから私からは見えない。
なんだかもやっとする。
八木君は
「失礼します」
とそれを手に取って目を走らせる。
岩瀬さんはそれとなく椅子を寄せた。

「香坂さん、これ」
机の中央にタブレットを置いて私にも見えるようにしてくれた。
「これ、アンケートのコメントなんですけど、ここ」
と指さした。
岩瀬さんは一瞬、片眉を動かした。

なんか、恐いんですけどおー！？
視線を岩瀬さんに向けないように、タブレットに視線を落とした。