美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱

「『友達に言って嫌な気持ちになったら嫌だからAIに話す』、『AIの方が気にせずなんでも話せる』、『AIは絶対に否定しないから話しやすい』」
八木君が読み上げた。

フムフム。
私は中高生の意見を聞いて、すごく共感を覚えた。

「ああ、わかる」
思わずつぶやいてしまった。
「えー、分かるんですか？」
岩瀬さんは驚きの声をあげた。
どことなく感じる岩瀬さんの棘がチクリと胸に刺さって来る。
落ち込みかけたけれど、仕事だと考えて、それを見せないように顔をあげた。

「俺も分かる気がします」
と八木君が同意してくれてほっとした。

「少し前に『KY』、『空気読めない』って言葉が流行って、空気を読んだ発言をしなくては笑われるって風潮があって、そんな中で自分の意見を言いにくくなる気持ちはよくわかるんですよね」
「うん。空気が読めないことと自分の意見を言わないことはイコールじゃないのにね」
「そうですね」

八木君と話していると不思議と自分の思いがスラスラということができる。
そう思いながら、私と八木君は思うまま話した。
岩瀬さんはじっと私たちの話を聞いては頷いていた。

「コロナでリモートだったり、最低限しか会話ができない中で生活してきた子供たちが『さあ話していいよ』って言われて思ったことを話せるかって話じゃない？」
「うーん。めちゃくちゃ難しいと思いますよ。
失敗する経験も成功体験もずっと少なくて、クラスで悪さして怒られるお友達を見て『ああ、これをしちゃいけないんだ』って思う経験もずっと少ないはずですし」

「うん。　そんな環境だからAIは質問しやすくて話しやすい友達になっちゃったのかな」
「そう考えると、どういう方向性で携わっていくのが正解なのか、難しいところですよね」
「そうね」

私は人見知りだし、他人とコミュニケーションをとるのが苦手だ。
仕事だと割り切るのであれば人当たりのいい人として周囲に接することはできるけれど、自分の意見を言うのは得意ではない。
だから常に自分の見方でいてくれるチャットGTPが友達だという気持ちも分かる。