美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
薄暗い休憩室の中で、一か所光る数台の自動販売機の前で、手を繋いだまま、
「どれがいいですか?」
と尋ねられた。
「えっと、これ」
と指を指そうとして止まった。
左手は荷物を抱えていて、右手には八木君の手があった。
「指がさせないよ」
と言うと、
「手、離さないとだめですか?」
と尋ねられた。
「うん」
と言ってしまった。
八木君は手を放して、
「残念」
と言って悲しそうな顔をした。
「これがいい」
「はい」
と言ってココアを奢ってもらった。

八木君の甘さにあてられた私には、ココアは甘すぎた。


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