美人の香坂さん、酒は強いが恋愛は最弱
【side　八木俊樹】

香坂さんが隣の部屋に入っていくのを見つめていた。
俺はなんでここにいるのだろうか？


口田課長が作った夕食を二人で食べる。

そして、俺は今日あった出来事を話した。

口田課長は黙って話を聞いて、香坂さんが昼間の男二股かけられて別れたと言った。

「詳しくは話さないけどさ、優子の心の傷は、八木が思ってるより深い。
疑うことを知らずに育った優子にとって、信じていた人間に騙されて、裏切られるのは初めてだったんだ。
もうずっとら何を信じていいのかわからなくなってる。
人間が恐いんだよ」


「✕✕✕✕✕！」
寝室から香坂さんの声が聞こえた。
立ち上がった口田課長は走って行った。
ドアが空いたとき、一瞬香坂さんの「うわあああ」と叫ぶ声が聞こえた。

俺はじっとしていられなくてドアの前に立った。
「大ー丈夫、夢じゃけ。大丈夫、大丈夫」
と言う声が聞こえた。

口田課長はしばらくして戻ってきた。
「落ち着いた。嫌な夢を見たらしい」
と言った。


「明るくて前向きな優しい優子も優子だけど、今みたいなネガティブな優子も優子なんだよ。

八木はこんな優子も好きだと思えるか？」

「はい。好きです」
「そんなにすぐに返事すんなよ。
後でやっぱり無理でしたなんてなるくらいなら、これ以上関わって欲しくないからさ、ゆっくり考えてくれ。
まずは飯、食おうぜ。って、冷めちゃったな。温め直すか」
「大丈夫ですよ。冷めても旨いです」
「そうか？」


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