亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「あなたは……誰なのですか?」

 光の玉はゆらゆらとしながら、ルーチェの手に乗った。感触はないが、その光はとてもあたたかい。

『わたくしは、あなたと同じ魂を持つ者。この地でずっと、あなたが訪れるのを待っていました』

「私と同じ魂を……?」

『ええ。わたくしはあなたであり、あなたはわたくしなのです』

 ルーチェは意味が分からず、ブランケットを握る右手に力を込めた。

 光の玉が右手から離れ、ルーチェのまわりをぐるりと一周する。今度は上から下へと動くと、ルーチェの顔の目の前で止まった。

『翼はどこへやったのですか』

「翼……ですか?」

『聖女の翼です』

「聖女には翼があるのですか? 私は空を飛べるのですか?」

 光の玉がぐるぐると回りだした。かと思えば、ぶわっと風を吹かせて、ルーチェの髪を乱す。

『ああ、なんということでしょう。力を喪失しているだけでなく、翼もないとは』

 光の玉が上下左右を忙しなく動きながら、あたふたと喋っている。その光景がおかしくて、ルーチェが口の端に笑みを滲ませた時。

 激しい光が落ちたかと思えば、凄まじい爆風が起き、ルーチェを部屋の奥へと吹っ飛ばした。
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