亡国の聖女は氷帝に溺愛される
 さらなる衝撃を覚悟して、ルーチェが目蓋を閉じた時。

 まばゆい光がルーチェの目蓋の裏を満たしていった。

 驚き、目を見開いたルーチェの前には、燃え盛る炎の柱が立っていた。それはルーチェの盾となるように、今も燃え続けている。

 何故か熱くない──それどころか建物を燃やしてすらいない不思議な炎の向こうには、見知った少年の姿があった。

「──初めまして、レイチェルさんとやら。会えて嬉しいよ」

「──ノエルさん!」

 少女は弾かれたように跳び退り、一瞬で距離を取る。その美しい顔は苦々しく歪められ、今度は黒い煙を纏う槍を手にしていた。

 ノエルは少女へと向けて何発か炎を放つと、ルーチェの傍まで駆け寄る。

「怪我はない?」

「ありません、が……」

 ルーチェは自由が利かない身体に目を遣った。さきほど少女が唱えた呪文が光の輪を生み出し、それが杭となって、ルーチェの胸元、腹部、太腿、足首を縛り付けているのだ。

「…………これは」

 ノエルの表情が険しいものへと変わる。

「──ふふ、驚いた? 可愛い魔法使いさん」

 少女が槍を手に駆けてくる。ノエルはそれを易々と交わすと、一瞬で光の剣を出して、少女の槍にぶつけた。
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