亡国の聖女は氷帝に溺愛される
今回のマーズ行きでは、ルーチェは聖女として訪問することになっている。当初の予定では最小限の人数でお忍びで行くことになっていたが、いっそのこと大々的に向かう方が危険は少ないのではないかという声が上がったそうだ。
この日のために職人が仕立ててくれた衣装は、白と基調とした清廉なデザインのデイドレスだった。胸元はレースで花が編まれ、裾にも同じ模様の刺繍が入っている。
羽織っている青色のケープは、ヴィルジールが着ているケープコートとお揃いのようだ。
「兄上、ルーチェ様。道中お気をつけて」
城の留守を預かるために呼ばれたセシルが、エヴァンと共に門前まで見送りに来ていた。その隣にいるエヴァンは今生の別れでもないのに、ハンカチを手に涙ぐんでいる。
「うう、陛下……。私のこと、忘れないでくださいねっ……!セシル殿下と一緒にお茶を飲みながら、寂しく留守番してますから!」
「茶を飲んでいる暇があるなら働け」
「そんなぁ! お茶でも飲んで心を落ち着かせないと、私、私……一体どうしたらっ……!」
ヴィルジールは呆れたような顔で深く息を吐くと、ルーチェに視線を戻した。
「エヴァンが煩いから、早く行くとしよう」
ルーチェは微笑みながらうなずいた。
この日のために職人が仕立ててくれた衣装は、白と基調とした清廉なデザインのデイドレスだった。胸元はレースで花が編まれ、裾にも同じ模様の刺繍が入っている。
羽織っている青色のケープは、ヴィルジールが着ているケープコートとお揃いのようだ。
「兄上、ルーチェ様。道中お気をつけて」
城の留守を預かるために呼ばれたセシルが、エヴァンと共に門前まで見送りに来ていた。その隣にいるエヴァンは今生の別れでもないのに、ハンカチを手に涙ぐんでいる。
「うう、陛下……。私のこと、忘れないでくださいねっ……!セシル殿下と一緒にお茶を飲みながら、寂しく留守番してますから!」
「茶を飲んでいる暇があるなら働け」
「そんなぁ! お茶でも飲んで心を落ち着かせないと、私、私……一体どうしたらっ……!」
ヴィルジールは呆れたような顔で深く息を吐くと、ルーチェに視線を戻した。
「エヴァンが煩いから、早く行くとしよう」
ルーチェは微笑みながらうなずいた。