亡国の聖女は氷帝に溺愛される
◇
来たるマーズへの出立の日は、どんよりとした曇り空が広がっていた。
見送りにきたエヴァンは雨が降らないか心配しているのか、憂げに空を見上げている。その前を往復しているのはアスランとセルカで、馬車に荷物を運び入れるためにきびきびと動いていた。
ルーチェは元ソレイユ宮の使用人であったイデルに支度を手伝ってもらってから、待ち合わせ場所である裏門に到着した。いち早く気づいたエヴァンに会釈をすると、隣いるヴィルジールがルーチェを振り返り、早足で歩み寄ってくる。
「体調はもういいのか」
ルーチェは唇を横に引きながら頷いた。
「昨日は申し訳ありませんでした。その……おやつを食べ過ぎてしまい」
取ってつけたような言い訳だったが、ヴィルジールは疑う素振りも見せずに、ただ「そうか」と返してきた。
ヴィルジールの視線がルーチェから外れ、馬車へと向けられる。
用意されている馬車は二台。一台目にはヴィルジールとルーチェが、二台目には旅の荷物と付き添いで行くセルカとヴィルジールの従者であるルシアンが乗るそうだ。
護衛として騎士であるアスランとその部下たちが同行するそうだが、彼らは自分たちの馬に乗って行くという。
来たるマーズへの出立の日は、どんよりとした曇り空が広がっていた。
見送りにきたエヴァンは雨が降らないか心配しているのか、憂げに空を見上げている。その前を往復しているのはアスランとセルカで、馬車に荷物を運び入れるためにきびきびと動いていた。
ルーチェは元ソレイユ宮の使用人であったイデルに支度を手伝ってもらってから、待ち合わせ場所である裏門に到着した。いち早く気づいたエヴァンに会釈をすると、隣いるヴィルジールがルーチェを振り返り、早足で歩み寄ってくる。
「体調はもういいのか」
ルーチェは唇を横に引きながら頷いた。
「昨日は申し訳ありませんでした。その……おやつを食べ過ぎてしまい」
取ってつけたような言い訳だったが、ヴィルジールは疑う素振りも見せずに、ただ「そうか」と返してきた。
ヴィルジールの視線がルーチェから外れ、馬車へと向けられる。
用意されている馬車は二台。一台目にはヴィルジールとルーチェが、二台目には旅の荷物と付き添いで行くセルカとヴィルジールの従者であるルシアンが乗るそうだ。
護衛として騎士であるアスランとその部下たちが同行するそうだが、彼らは自分たちの馬に乗って行くという。