亡国の聖女は氷帝に溺愛される
「──随分仲良くなったんだね。聖女と」

 ノエルは帝国の宰相であるエヴァンが最速の手段で送ってきた茶葉で茶を淹れた。ヴィルジールが来たら淹れてやってくれ、と書かれているメモから、良い匂いがしたからだ。

 案の定、ヴィルジールは好きではないどころか嫌いだったようで。最初のひと口を飲んだ時、絵に残してやりたいくらい顔を顰めていたが、諦めたのか黙って飲んでいた。

「だからどうした?」

「別に。聖女のあんな笑顔を見たの、久しぶりだったし……アンタが笑う顔を見たのも初めてだったから」

 ノエルは魔法でポットを温め、白湯を淹れた。何の味も付けないからこそ、自然な味が楽しめる。

「……見ていたのか」

「見てたっていうか、視えてたっていう方が正しいかな。僕は一度訪れたことのある場所なら、たとえ遠く離れていようと、どこに居たとしても、視ることができるから」

「だとしたら、お前は──」

 ノエルは唇に人差し指を当て、首を左右に振った。ヴィルジールが言わんとしている言葉の続きは分かっていたし、それに対するノエルの答えを、ヴィルジールも分かっていただろうから。

 ノエルの髪が金色に染まった日。まだ十歳だったあの時のノエルは、聖王から祝福を受けたのだと見せかけて、特別な力を移されていたのだ。

 それは、一度足を踏み入れた場所に、第三の目を残すこと。その目は“あるもの”を捜す為に在ったが、神殿から出ることが出来ない聖王は、その力を最大限に使うことが出来なかった。

 だから外から来たノエルに、託したのだ。

 この世のどこかにある、───を捜す為に。
< 238 / 283 >

この作品をシェア

pagetop