亡国の聖女は氷帝に溺愛される


「───恐らく聖女は、あの竜の元へ向かったんだと思う」

 月明かりを頼りに、真夜中の森を馬で突っ切る。まともな人間の考えることではないが、夜明けを待つことはできなかった。

 馬の手綱を握るヴィルジールの手に、冷気が纏わりつく。

「竜の元へ行って何をする気だ」

「竜をどうこうというより、聖王様を救けに行ったんだと思う」

「聖王を? 聖王は竜といるのか?」

 ノエルは自分を背に乗せているフェニックスの羽に触れ、それから頭を撫でた。

「僕が最期に視たものは、聖王様が竜に剣を突き立て、そして竜が巨大な炎を吐いているところだった。一夜で国は滅んだけど、聖女は生きていた。となると、聖王様は捕らわれているんだと思う。竜の中に」

「竜の中に?」

「呑み込まれたって言えばいいかな。竜は己の一部にしたつもりなんだろうけど、聖王様は何らかの方法で生き延びていたんだと思う」

 ヴィルジールは切れ長の目を細めた。

 ルーチェが生きているならば、聖王もどこかで生きているとは思っていた。ルーチェのように、何らかの原因で力を失い、行き倒れているのではないかとも。

 だが、ノエルの推測には心当たりがある。
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