兄弟の溺愛に堕ちて
「……ありがとうございます。」

ようやく搾り出した声は、自分でも驚くほど震えていた。

握られた指先から伝わる熱が、しばらく消えそうになかった。

だが、意外にも蓮さんの仕事は多忙だった。

書類を抱えてはあちこち飛び回り、会議の合間に人と話し、電話をしながら歩く姿。

けれど――困った時には、必ず私を探してくる。

「美咲さん、どこ~!」
声をかけられて振り返ると、息を弾ませた蓮さんが立っていた。

「どうしました?」

「今度、ノベルティ配りたいんだけど、200セット作れる?」

うわ……! 一瞬で営業部時代の記憶がよみがえる。

あの頃は、毎週のようにノベルティセットを黙々と作っていた。

「営業部に頼みますか?」

提案してみるが、蓮さんは苦笑いを浮かべた。

「それが皆、外回り行ってていないんだよ。」
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