兄弟の溺愛に堕ちて
頭の中でその言葉が何度も反響する。

それって、私のことを言ってる?

いや、そんなはずない……でも。

コピー機の機械音が、やけに大きく響く。

蓮さんの横顔は、さっきまでの軽さが消えて、仕事に集中している時のきりっとした表情になっていた。

なのに、さっきの言葉だけが熱を帯びたまま、私の胸の中でくすぶり続ける。

心臓が早鐘を打つ。

この音、絶対に外まで聞こえてしまいそうだ。

蓮さんの言葉に揺らいじゃいけないのに、どうしてこんなに……。

私は慌てて視線を紙束に戻したが、もう遅かった。

その瞬間から、私の中の何かが、確実に動き出してしまっていた。

「ねえ、一つ聞いてもいい?」

「はい、何ですか?」

蓮さんの視線がまっすぐで、ドキドキして息が浅くなる。

「兄貴とは恋人同士?」

その瞬間、手に持っていた冊子が指から滑り落ち、バラバラと床に散らばった。
< 15 / 106 >

この作品をシェア

pagetop