兄弟の溺愛に堕ちて
いつだって私を惹きつけてやまないその笑顔を、もっと近くで、もっと自分だけに向けてほしい。

でも、一真さんの視線の奥にある想いを、私はまだ知らない。

「あいつとなんかあったの?」

その一言に、心臓が跳ね上がった。

「えっ?」

自分でも間の抜けた声が出てしまう。

「いや、なんか……心ここにあらずって感じがするから。」

一真さんは何気ない調子で言ったけれど、その眼差しは鋭く私を見ているように思えた。

まるで心の奥を覗かれているみたいで、息が詰まりそうになる。

——そうだ、今は仕事中だ。

「すみません。仕事に集中します。」

慌てて背筋を伸ばし、パソコン画面に視線を戻す。

デスクへ戻りながら、頭の中で自分に言い聞かせる。

昨日の夜のことなんて、今の仕事には何の関係もない。

蓮さんと二人きりのオフィス。

彼の腕の中で抱きしめ合い、唇を重ねたこと。
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