兄弟の溺愛に堕ちて
二つの熱に挟まれて、私はますます身動きが取れなくなっていた。

「それは?」

やはりというべきか、蓮さんの目が私の胸元に留まった。

ペンダントを隠したはずなのに——見逃してくれなかった。

「ああ、あの……」

声が震え、誤魔化そうとした瞬間。

「俺が贈ったんだ。」

一真さんのはっきりとした声が、空気を切り裂いた。

「えっ……」

息が止まる。どうして、わざわざ口にしてしまうの?

蓮さんの瞳が曇り、ほんの一瞬、揺れるのが見えた。

「彼女、今日誕生日なんだよ。」

さらりと告げる一真さんは、笑みさえ浮かべていた。

「……そうなんだ。」

その一言を絞り出した蓮さんの目が、大きく見開かれる。

あんな表情をする蓮さんを、私は初めて見た。

焦ってる。苛立ってる。言葉を失っている。

「じゃあ、今日は二人でディナーとか行っちゃうの?」
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