兄弟の溺愛に堕ちて
わざと軽く投げかけたその言葉の裏に、強い独占欲が滲んでいた。

空気が一気に張り詰める。

——どうしよう。

胸の奥が、罪悪感と期待とでごちゃ混ぜになっていく。

どちらの視線にも囚われて、逃げ場がなくなる。

心臓の音がうるさくて、誰にも聞こえてしまいそうだった。

「それが仕事が立て込んでて、お祝いできそうにないんだ。」

一真さんの声は低く、どこか申し訳なさそうだった。

ほんの少しでも、一緒に過ごせるのではと期待していた分、その言葉は胸に突き刺さった。

「そうですか……」うつむいた声は、自分でも驚くほど小さかった。

「ごめん。」

その一言に、彼がどれだけ多忙なのか、私が一番知っている。だから責めるなんてできない。

「いいんです。ペンダントだけで、十分です。」

震える指先でペンダントのトップを撫でる。

胸の上で小さく揺れる光は、まるで子どものように甘えて欲しがっている私の心を、必死で抑え込む楔みたいだった。
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