兄弟の溺愛に堕ちて
――欲を言えば、一緒に食事がしたい。

――たった数時間でいいから、隣にいてほしい。

そんな願いを飲み込んで、「十分」と言い聞かせる。

普段こんな贈り物、もらったことなんてなかった。それだけで、胸がいっぱいになるはずなのに。

「似合ってるよ。」

微笑む一真さんの眼差しが温かくて、また心が揺れる。

これ以上望んだら、きっと私は誤解する。――いや、もうしてしまっているのかもしれない。

そして――そうも言っていられない一日が始まった。

確かに一真さんの言葉に嘘はなかった。

朝から山のように積まれた決裁書類だけで数十枚。

私が次々と運び込むファイルに、彼は黙々とペンを走らせる。

「次。」
「はい。」

必要最低限の言葉だけを交わし、私もまた無心で処理を手伝う。

電話が鳴れば立て続けに取り次ぎ、外部からの来客予定も差し込みで入ってくる。
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