兄弟の溺愛に堕ちて
社長室は一日中、息をつく暇さえない戦場だった。

そんな中、一真さんは昼食を抜いてまで机に向かい続けていた。

私はただ彼の横顔を見ながら、せめてお茶の差し替えくらいしかできない自分が歯がゆかった。

――やっぱり、本当に忙しいんだ。

昨日、落ち込んだ気持ちを思い返し、自分を恥じた。

そんな時だった。

「美咲さん。」

不意に名前を呼ばれて振り向くと、蓮さんが書類を抱えて立っていた。

「あ、この前の件、ありがとう。」

彼は柔らかい笑みを浮かべながら、私に書類を差し出した。

「いえ、たいしたことしてませんから。」

そう答えながらも、胸の奥がふっと軽くなるのを感じた。張り詰めていた空気が少しだけ和らいでいく。

蓮さんは続けて小声で囁いた。

「兄貴は相変わらずハードだろう? 君まで潰されないように、気をつけてね。」

その気遣いに、思わず笑みがこぼれる。

けれど同時に――ペンダントの重みを思い出し、胸の奥で罪悪感が疼いた。
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